予防歯科
予防歯科とは?
むし歯や歯周病など、歯の病気というのは「生活習慣病」です。食生活や喫煙はもちろん、毎日の歯みがきや定期的に歯科医院でプロケアを受けることなど、生活習慣が整っていないと、何度もむし歯になったり、歯周病の進行を食い止めることができなくなったりします。
つまり、むし歯や歯周病など歯の病気になった原因を改善しなければ、治療をしたとは言えないのです。そのため、むし歯も歯周病も病気にならないように、これ以上悪くならないように、一生涯コントロールするべきものです。
同じ生活習慣病のジャンルには高血圧や糖尿病があげられますが、高血圧や糖尿病の人が病院の医師に「治療はいつ終わりますか?」と聞くでしょうか? おそらく、そんなことは聞かないと思います。なぜなら、高血圧も糖尿病も一生涯のコントロールが必要だからです。
むし歯や歯周病も高血圧や糖尿病と同じ生活習慣病なのですから、治療がいつか終わるものではなく、再発しないようにコントロールを続けることが必要なのです。
この生涯にわたるコントロールが「予防歯科」です。
なぜ、予防が必要なの?
昭和の時代には、歯医者は痛くなったら行く場所、良くなったらそれで終わり、というのが多くの患者さんの認識でした。風邪をひいたら病院に行って、薬をもらって良くなるというのと同じ感覚です。
その結果、多くの人たちが「年をとったら歯は悪くなるもの、入れ歯になるもの」と思っていました。ある意味では、昭和の時代の歯医者との付き合い方がインプラントやセラミックなどのニーズを生み出したとも言えます。
実際に、私たちも治療技術を追い求め、精密治療・インプラント・再生療法などの研修を受け、どうやって困っている人たちのお役に立てるのかと努力してきました。
でも、歯科医療を長く経験すればするほど、どれだけ治療技術を磨いても思うようにいかないことに気づくようになりました。なぜなら、むし歯の詰め物や被せ物にしてもインプラントにしても、人工物であることに変わりはないからです。
歯科治療というのは、あくまでも「修理」にすぎません。交通事故で車を修理して、その部分が永久に持つかと言えば、それはその後の使い方次第と誰でも思うことでしょう。
歯も人工物で修理する以上は、車の修理とまったく同じこと。10年、20年、30年と時間が経てば、問題が出るのは当たり前のことかもしれません。
つまり、私たちにむし歯の修理はできますが、元通りの自分の歯に戻すことはできないのです。歯周病にいたっては、修理することさえできません。悪化しないようにするのみです。
ですから、むし歯も歯周病もご自身の努力で「予防」をしていかないと、自分の歯を守っていくことはできません。歯科医院でどんなに高度な治療を受けても、それだけではダメです。今の状態を維持するために、ご自身の努力で一生コントロールを続ける必要があります。
むし歯も歯周病も、あなたが「今の状態を守っていこう」と努力できるかどうかです。歯の病気の主治医というのは、患者さんご本人なのです。
具体的に何をするの?
これまでの長い歯科医療の経験で思うことは、
「歯医者の仕事は、病気についての知識を患者さんと共有し、失われた機能を回復しつつ、いかにきれいな天然の歯(自分の歯)やきれいな歯並び、健全なお口の機能を獲得できるようにお手伝いし、病気になる前から意識してもらうこと」
と考えています。
さらに、口は生きるために欠かすことのできない栄養の入り口になるわけですから、お口の健康を守ることは全身の健康を守ることにもつながります。最近の研究ではさまざまな生活習慣病と歯周病菌など口の中の細菌の関連が明らかになってきていますので、なおさらです。
このような考えのもとに、上人豊田歯科では定期的に当院へ通院してもらい、次のようなプログラムで患者さんの歯とお口の状態を維持するサポートをしています。
1:定期的なお口の中のリセット
むし歯や歯周病の原因となるお口の中のバイオフィルム(細菌の塊)を定期的に取り除き、お口の中の状態を良い状態へとリセットします。
私たち歯科医療のプロでも、自分の歯みがきだけで100%バイオフィルムを取り除くことはできません。バイオフィルムを取り除くには、歯科医院での歯科衛生士によるプロクリーニングが必要です。
歯とお口の状態によって、1ヶ月~4ヶ月ぐらいの間隔で、定期的にプロクリーニングを受けることをおすすめしています。
2:歯とお口の健康チェック
むし歯や歯周病の状態をチェックします。もしむし歯が見つかったとしても、初期の段階で見つけることができれば削る部分は少なくて済みますし、場合によってはフッ化物を使ったむし歯予防処置を行いつつ、ご自身による歯みがきなどのホームケアと歯科衛生士によるプロクリーニングで経過を観察していけることもあります。
歯周病については、しっかり進行を予防できているかどうかをチェックします。歯周病は治ることがありませんので、これ以上は進行しないようにするためにも、定期的なチェックを欠かすことはできません。
3:生活習慣改善のアドバイス
繰り返しお話しているように、歯の病気は「生活習慣病」です。ですから、悪くなってしまった頃の習慣を悪くならないようにする習慣へと変えていくことが必要になります。
当院では、特にリスクの高いPG菌を明らかにするPCR検査(歯周病の病原菌の遺伝子検査)も実施していますので、あなたのリスク度合いに合わせて生活習慣改善のアドバイスをします。
特に重要なのは、毎日の歯みがきの習慣です。ただ歯をみがけば良いということではなく、むし歯や歯周病の原因となるバイオフィルムをきちんと取り除くことができるように、正しい歯のみがき方を身につけるサポートをしています。
健康であるために
多くの人たちが、健康であることを望みます。では、健康とはどのようなものなのでしょうか?
私たちは、「その部分の存在を意識せずに済むこと」が健康だと考えています。つまり、歯の存在を特に気にすることなく生活ができる状態であることこそ、口の健康だということです。歯のトラブルや悩みなど気になることが何もなければ、とても快適に生活ができますよね。
また、より深い意味での健康と考えれば、「身体を人工物にしないこと」に尽きます。自分が持って生まれた自分の歯を一生そのまま傷つけることなく守っていくことができれば、これが一番の健康と言えます。
とはいえ、すでに歯に人工物を入れてしまっているという方も少なくないと思います。そのような方は、もうこれ以上は口の中に人工物を増やさないために、歯科医院を徹底的に有効活用して、できるだけ人工物を「延命」(現状を維持)してほしいと思います。
天然歯(自分の歯)の価値は、プライスレスです。一度でも削ってしまった歯は、たとえ1,000万円支払ったとしても、健康な元の状態に戻すことはできません。自分の歯を守ることは、インプラントで機能を回復するよりも圧倒的に価値の高いことです。
「身体を人工物にしないこと」
「歯の存在を意識せずに生活できること」
そんな健康な生活を私たちと一緒に手に入れ、そして守り続けていきましょう!