歯周病の治療
見た目には分からない歯周病
歯周病とは、読んで字のごとく「歯の周りに発生する病気」です。歯周病になると、歯ぐきや歯を支える骨など、歯の周りの組織に症状が見られるようになります。
ただし、歯周病の症状は目に見えるものではありません。むし歯の場合、歯に穴があいたという分かりやすい症状があらわれますし、それで気がつく人も多いものです。でも、歯周病は見た目にはまず気がつきません。
特に初期段階では、見た目に分かるような変化は何もなく、自分が歯周病であることに気づかない人も多いくらいです。実は、ギネスブックにも「人類が最も多くかかっている病気」として歯周病が載っています。
歯周病は20代から始まりますが、若いころは歯をみがいたときに血が出ることは気にしない方が多いようです。ところが、そのレベルで治療を受けずに放っておくと、歯ぐきの下でゆっくりゆっくり進行し続け、30年から50年かけて歯を支える骨を溶かしていきます。
そのため、年齢を重ねて進行が進むと歯がグラグラ揺れてくるようになり、最悪の場合には歯が抜け落ちてしまうこともあります。
「治る」はありえない歯周病
歯を支えている骨(歯槽骨)は、一度溶けてしまったらもう二度と元には戻りません。再生療法でも100%戻ることはありません。つまり、歯周病にかかってしまったらもう「治る」ということはありえないのです。
ですから、歯周病治療の目指すところは「病状安定」「現状維持」ということになります。今の状態で歯周病の進行を食い止め、それ以上に進行することがないように今の状態を一生涯に渡って維持し続けることが目的になります。
ただ、先ほどもお話したように、歯周病というのは目に見える病気ではありませんし、初期段階での自覚症状もほとんどない病気です。そして、自分で症状が自覚できるような段階になると、かなり病状が進行してしまっていることがほとんどです。
そのため、症状に気づいて歯科医院を訪れたときにはもう手遅れ、歯を抜くしかないという状態になってしまっている人が本当にたくさんいます。
そんなことにならないように、歯周病という病気を正しく理解して、歯周病の予防に努めて欲しいのです。
歯周病は“生活習慣病”
そんな恐ろしい歯周病ですが、なぜ歯周病になってしまうのかというと、その原因は「生活習慣」にあります。まさに、糖尿病や高血圧と同じジャンルの「生活習慣病」なのです。(実際に、厚生労働省が示す「健康日本21」で生活習慣病に定められています。)
歯周病の原因は、バイオフィルムという細菌の塊です。バイオフィルムの毒性が身体の抵抗力を上回ってしまったときに、歯周病が発症するのです。
また、日ごろの歯みがきが不十分なためにお口の中のバイオフィルムがきちんと取り除けていないと、バイオフィルム中の細菌の毒性が増し、さらに深く広がっていきます。
このように、食生活や歯みがきといった生活習慣が原因となって歯周病は進行し、さらに喫煙やストレスなども歯周病を悪化させる要因になっています。
また、お口は身体の中に栄養を運ぶ入り口にもなっていますが、実は口の中にある歯周病菌が歯ぐきの中の毛細血管に侵入し、血流に乗り全身の臓器にもさまざまな悪影響を及ぼしていることがこれまでの研究で明らかになっています。
具体的には、動脈硬化、心疾患・血管疾患、糖尿病、早産・低体重児出産、誤嚥性肺炎、非アルコール性肝炎、骨粗しょう症、大腸がんなどの病気を悪化させる原因になっています。
特に糖尿病と歯周病の関連性が深く、糖尿病が歯周病を悪化させる要因になり、歯周病も糖尿病を悪化させる要因になっています。
ですから、歯周病にならないようにする、歯周病を悪化させないようにすることは、全身の血管を守り、身体を健康に保つという目的においても、とても重要なことなのです。
歯周病治療の主治医は
あなた自身!
このように、歯周病は生活習慣が引き起こす病気ですから、歯周病の予防や進行を食い止めるためには「歯周病になってしまった生活から歯周病が再発しない生活へ」生活習慣の改善が必要です。
高血圧や糖尿病になってしまったら、薬による数値のコントロールはもちろん、食生活や運動習慣などの改善を図ると思います。そもそも、お医者さんへの定期的な通院をするかどうかも、ご自身の行動にかかっていますよね。
つまり、生活習慣病の治療というのはご自身の生活習慣を変えることに尽きますし、本質的に「あなた自身が主治医になる」ということなのです。あなた自身の行動を良い方向に変化させることによってのみ、生活習慣病の治療に取り組むことができます。
歯周病の治療では、具体的には次の3つのポイントで「歯周病になってしまった生活から歯周病が再発しない生活へ」生活習慣の改善をはかります。
1:毎日の歯みがき
歯周病の原因となるバイオフィルム(細菌の塊)を取り除くには、まず毎日の歯みがきが基本です。細菌の塊をきちんと取り除くことができるように、正しい歯のみがき方を身につけましょう。正しい歯のみがき方は、もちろん私たちがアドバイスいたします。
2:定期的に歯科医院に通うこと
歯みがきがどれだけ上手にできるようになったとしても、歯みがきだけで100%バイオフィルムを取り除くことはできません。歯科医療の専門家である私たちでも、歯みがきだけで100%取り除くことは不可能です。
そのため、定期的に歯科医院でのプロクリーニングを受けて、お口の中のバイオフィルムをきちんと取り除くようにしましょう。また、その際には合わせて歯周病の進行具合をチェックし、歯周病の再発がないかをしっかり確認いたします。
3:食生活などの改善
食生活や喫煙なども、歯周病のリスクを高める要因になります。どれだけ歯みがきをがんばっても、どれだけ歯科医院のプロクリーニングにがんばって通っても、普段の生活がめちゃくちゃだったら歯周病の進行を食い止めることはできません。
当院では、歯周病のリスク度合いを調べる検査も実施しておりますので、検査結果に基づいて重点的に改善したいポイントもアドバイスしています。私たちと一緒に「歯周病になってしまった生活から歯周病が再発しない生活へ」生活習慣の改善を図りましょう。
歯医者さんとの
正しい付き合い方
歯周病というのは、とても恐ろしい病気です。しかしながら、あなたと私たちが手を取り合い二人三脚で進行予防に取り組んでいけば、今の状態を一生涯にわたって維持していくことはできます。
言い換えると、今の状態を長く維持していくために歯医者さんを利用して欲しいのです。
歯医者さんというと、どうしても「痛くなったら行く場所」と考えられがちですが、本当は「痛くならないように」「悪くならないように」通うべき場所です。
これからは、良い状態を維持するために、「痛くなくても」「悪くなくても」どんどん歯医者さんを活用してください!