上人豊田歯科
院長　豊田隆雄

また、小さいころから医院の技工室が遊び場だった私にとって、歯医者になるということはとても自然なことでしたし、歯医者以外の道はまったく頭にありませんでした。

そんな私が歯科医師免許を取得して初めに目指したのは、高い技術力を持つ歯科医師です。歯科医師たるもの高い技術を持つのは当然だと思っていましたし、勉強会や研修会にも足しげく通って技術の習得を目指しました。そして、それなりに高い技術も身につけました。

ただ、ある時ふと思ったことがあります。それは、「私が診てきた患者さんたちは、本当に治ったと言えるのか？」ということです。

歯科治療というのは、むし歯を削って、人工物を入れているだけです。決して歯が元の状態に戻ったわけではありません。つまり、今までやってきた治療というのは、歯を治していることではなく「修理」や「延命」に過ぎないということに気づいたのです。

このことに気づいてから、私の歯科治療のスタイルは大きく変わりました。そして、私は「私に口の中を触らせることがない歯科医療」を理想と考えるようになりました。

私が患者さんの口の中を触らずにすむということは、その人には何もトラブルがないという証拠です。そのような良い状態をできるだけ長く維持し続けていくことができるようにお手伝いするということが、私たち歯科医院の本当の役割だと気づいたのです。

そして、悪いところを修理することによってまた悪くなるリスクが高くなるという「歯科ドミノ」を防ぐということに、強い使命感を持つようになりました。

歯や口について何も気になることがないという状態をすべての患者さんに維持していって欲しい、というのが私の願いです。何も気にならないということは悪いところがない証拠ですし、気にならない状態を長く維持できるようにすることが「健康」と考えています。

ただし、それを手に入れるためには、今の状態になっている原因を正しく理解することから始めなければなりません。今の結果というのは、過去の行動の積み重ねです。ということは、この先の未来を変えていくためには、これまでの行動を変えていくことが求められます。

とはいえ、そのために何をしたら良いのか分からないというのは、当然のことだと思います。だからこそ、歯と口の専門家である私たち歯科医師が存在しているわけです。

歯科医師の仕事は、歯を削って、人工物を詰めたり被せたりすることではありません。患者さんのお口の中に人工物を増やすことなく、そして歯や口に何も気になることがなく快適に過ごせるようにお手伝いすることこそ、歯科医師の仕事だと思っています。

ですから、上人豊田歯科では原因を理解するための検査も念入りに行うし、むし歯などで歯科治療を行った後にも良い状態を長く維持するための予防活動に取り組むことなど、少々面倒くさいことを言う歯医者だと自覚しています。

でも、そんな私の「歯科治療に治ったという概念はない。だからこそ、歯科ドミノを防ぐための行動をサポートする。」という考え方に賛同してくださるのであれば、あなたが快適で楽しい人生を送ることができるように精いっぱいサポートさせて欲しいと思っています。